何事にも変えがたい貴重な経験

安西智栄子

寺澤鍼灸整骨医院院長(摂津RC推薦)

はじめに

このたび、私は大阪摂津ロータリークラブのご推薦によりGSEチームの一員として アメリカ、ウインスコンシン州を訪問いたしました。 出発前に、ロータリー、GSEの先輩の方からお聞きしていたとうりGSEでの旅は、今まで経験したことのないすばらしいものでした。

GSEの旅は、出発前の用意の段階からはじまりました。 まず、参加するためには1ヵ月間仕事場に穴を空けることになるため診療所での用意は、代診の先生を立てるなど平成13年の11月ごろからはじめなければならなく結構勇気のいる大変な決断でした。

しかしなぜそれほどまでして参加したかというと、この旅行の趣旨を聞いたとき私にとっては、以前から興味のあったアメリカでの代替医療を自分の目で見に行くことができ、また仕事や世の中に精通したロータリーの方たちが、このスケジュール作りに携わって、お世話していただけるとなるとこれほどのチャンスはないと思ったからです。 また、この旅行は、自分を試す良い機会だともおもいました。未知の物にどれくらい柔軟に対応できるか、全く見知らぬ人と、どれだけ打ち解けることができるものなのか、体力的に大丈夫か、また自分がこの1ヶ月の体験でどれくらいかわるのか、などなど、すべてにおいてです。

これからいったい何が起こるのかと、期待と不安をいっぱい抱えたまま5月1日関西国際空港を飛び立ちました。 現地に到着後は、各地のRC,およびロータリアンにはこんなにもして頂いてよいのだろうか、と思えるくらい大変に暖かく受け入れていただき、さまざまな場所を訪れ、であった人たちも本当に素敵な人たちが多く、私のアメリカの印象はとてもよいものとなりました。 いろいろな人と出会い、いろいろな物を見、体験し本当に何事にも変えがたい貴重な経験を、させていただいたと感謝しています。 ご支援していただいた日本のRC、ロータリアン、協力していただいた方すべてに、簡単ではございますが以下のご報告をさせていただきます。

ホストファミリー

私は、この1ヶ月間7つのファミリーのお世話になりました。

1番目のボブ・ホッシュさん、2番目のギャリー・オールセンさんは、お二人とも以前にガバナーの経験もある方で色々なことに戸惑いがちな私を本当に上手くリラックスさせてくれました。 ホームステイ経験もありませんでしたし、日本でも他人のおうちに泊まることなどほとんどないために今回本当のところ、たいへん心配をしていました。 が、その様な心配は全く無用でありました。何の気負いもなく本当にさりげなく迎えてくださることがなによりありがたかったです。 まるで、自分の娘のように接してくださり、とても自然で、暖かく守ってくださっているような感じでとても安心して過ごすことができました。 とくに、オールセンさんの奥さんに、私がTVのリモコンの使い方が分からないと相談した時、リモコン操作のいちいちを、絵入りで1枚の用紙にびっしり書いてくださったのには感動しました。
ギャリー・オルセンさんと妻のキャシーさん

3つ目のステイ先のブライアンさんは保険会社にお勤めの方で、奥さんと、4人の小さいお子さんという家族構成でした。ホームステイ中は、日曜日には家族みんなで教会へ出かけたり映画館に行ったり、また夜には、子供たちに童話の本を読むことをせがまれ読んでいるうちに子供に発音を治されたり、また、日本人に会うのは初めてだと、興味を持って質問攻めにされたことも楽しい思い出です。
ブライアンさんの子供たち

アシュカシでは2人のカイロプラクターの先生のお宅にステイしました。 一人目の、ヘンドリックソン先生はベテランの男性の先生でした。 2人目のキム・ジョンソン先生は、4年前に開業したばかりの若い女性の先生で 弁護士のご主人と小さいお子さんが2人のご家庭でした。 わたくしにとって、女性開業医の先生のところにステイできたことはたいへんラッキーでした。 日本では、私も仕事に関しては彼女と同じような立場であり、女性ならではの仕事上の悩みにはたくさん遭遇しています。ですから女性が働くことに日本よりは進んだ考えをもつアメリカでの開業医さんの意見を聞くことができ、暮らしぶりもみせていただくことができたからです。 キム先生は月、火、木、金、週4回朝10時〜5時まで治療所に出勤されます。 ほんとうは、もっと働けば収入は、あがるけれども家族で過ごす時間を大切にしたいからと仕事の時間を、結婚してからはずっと減らしたそうでした。 また、弁護士であるご主人も妻が働くことを快く認め、大変協力的でした。 そして、奥さんが立派な仕事をしていることを誇りに思っているようでした。
又キム先生は家庭と仕事だけでなくロータリー以外にも女性企業化たちのボランティア団体に所属し、とても精力的な女性でした。 週に1回手入れをした美しい爪と、お洒落なパンツスーツ姿で(白衣は着ないようでした)次々患者をこなす女性の先生はみていてとても気持ちの良いものでした。

つぎの、ポートワシントンでのステイ先はGSEウイスコンシンチームの団長さんのエリックさんのおうちでした。 日本通のエリックさんは到着した時なんと日本茶とおかきをだしてくださいました。 アメリカにきて2Wぶりに日本の味に触れてほっとしたと同時に、え?日本人の私がアメリカ人の方にこのようなもてなしをうけて?ほっとしている?考えてみると実に奇妙な面白い体験だなあと、あとでとても可笑しくかんじました。 また、ポートワシントンでは、エリックさんはほとんど毎日ドライバー役をかってでてくださり、毎日の予定の調整をとったり、たいへん忙しくしていらっしゃったにもかかわらずその合間を縫って、デジタルカメラでとった写真を編集して、日本チームのみんなにくださったり、まんべんなくみんなに声をかけることを気遣ったり、そのこまやかな配慮はそばで見ていて大変ものでした。

また、最後のハートランドでのファミリーの、マグダさんも大変印象に残っています。 アメリカの黄色いおなじみのスクールバスの会社を経営していらっしゃる女性のロータリアンでした。 こちらのかたはみなさん広くて立派な庭をもっていらっしゃいますが、ガーデニングが趣味のマグダさんのお庭は本当にとびきり素敵でした。 庭というより、ちょっとした公園のような広さで、そこには人工的に池が作られてあり2人乗りの真っ白な足こぎボートが浮かんでいます。池の中には小さな魚や、亀などもすんでいました。またマグダさんの息子さんやお孫さんたちは時々庭にテントを張って寝たり、キャンプファイヤーのようにタキギをしたりして楽しんでおられました。(どれくらい広い庭であるか想像していただけると思いますが) お休みの日には、マグダさんとご主人のポールさんは、畑をつくったり花壇の手入れをしたりしておられました。 野生の鳥を呼び込むための、オレンジやジャム、などのえさがウッドデッキにおかれていて、とても美しい鳥や、珍しい飛び方をする鳥、をほんとうにまじかで観察できました。 その他、鹿やリスが現れたりなんだか、まるで夢のようなお家でした。 そして帰国の前日マグダさんが運転するする実際に子供たちを送り迎えに運行するスクールバスに乗せてもらいました。

マグダさんの会社のスクールバス

ホストファミリーのマグダさん

たった4週間のうちに7つもの様ざまなタイプの家庭にホームステイさせていただき、それぞれのお家の暖かいおもてなしをうけ、またそこで生のアメリカを感じることができましたことはほんとうにすばらしい体験でありました。
それらは、普通の海外旅行などでは決して体験できないことばかりでした。

日常生活の中で感じたこと

ステイ中みなさんからいちばんよく受けた質問は、日本とアメリカの、最も違うところはどこ?というものです。 私なりに感じたことは、みなさん自分にとってなにがいちばん大切か、必要かほんとうによくわかっている。だからお金をかけるべきところ、時間をかけるべきところがとてもはっきりしている。 また、夫婦がどこもとても仲が良いとおもいました。離婚も多いアメリカと聞いていますが、信じられないくらいでした。 それだけに、自分の気持に忠実であるのかもしれませんが。

また、何もかもが、とても大きいのでとても気持がよかったです。 車、道路、人、家、食べ物、衣服などなんでもです。 とくに、洋服は最高でした。私は日本では、LサイズですがアメリカではSサイズ、ものによればXSサイズでもきることができました。そのうえ値段は日本の3分の2くらいでした。 また何事も、形式ばらず大変フレンドリーなかんじ。プレゼンテーションも、たびたび行われたパーティーも、緊張させる感じはなく、本当に皆が楽しむためにやるかんじです。いつも、パーティーはとても楽しく、なるほどホームパーティーというのはこんなふうにするのか、こんなかんじいでいいのか、と勉強になりました。

あと、皆さん家の中や、オフィス、などに家族や、ペットの写真が必ず貼られていますが、これも、とってもいいなあと、感じました。 また、お店のディスプレイや、色がカラフルであり、建物、オフィスなどの内装、デザインもとてもすっきりしていていました。 また、どのようなシステムもたいへん合理的であり、無駄が少ない。また責任の所在がはっきりしている など、よくいわれていることなのですが、いずれのことも肌で感じることができ大変興味深かったです。

職業研修

現在、日本でもアメリカでも東洋医学などの代替医療が、見直されつつあります。

日本にいても、海外の代替治療の情報がいろいろな形で入ってきます。 わたくしは、カイロプラクティク、アロマセラピー、鍼灸、整体、マッサージ、カウンセリングなどの理論や、技術をくみあわせて自分なりに治療を工夫しているのですが、特にアメリカではカイロプラクティクが、進んでいますので、今回カイロプラクターとのコンタクトを希望いたしました。 また、専門である鍼灸院の見学、それに関連する保健医療施設の見学をリクエストしていました。

(教育制度)
アメリカでは、カイロプラクターも、鍼灸師(アクパンクチャー)もほとんどの州で免許継続のための研修制度が義務づけられています。又、免許更新のシステムがあり、州によっては高い知識や技術の習得が、常に義務付けられているようです。日本の場合は免許を取得すると、その後の教育制度はなく、生涯にわたって履修を義務付けられることはありません。 また、米国のカイロプラクティクでは診断にレントゲン撮影ができるため頚椎などの必用最低限の画像評価は可能であるし、カイロプラクティク大学の授業でレントゲンの実践学がしっかり学習されるそうである。

(保険制度)
日本と米国の最も大きな違いは、日本の国民保険や、社会保険のような公的保険はアメリカには存在しません。 アメリカでいういわゆる健康保険というものは数多くの保険会社(insurance company)と 非営利団体(non profit organization)によって保険商品として販売されています。 つまり健康保険の種類は日本でいう生命保険や、傷害保険と同じくらい数多くあるのです。 各保険によってカバーする範囲も額もまちまちです。また条件のよい保険ほど個人負担の掛け金も高くなるわけです。どこの保険会社を選ぶかは家族の病歴、既往歴、住んでいる地域などの、さまざまな要因によって違ってきます。 個人で加入すると安いもので独身の人月額180ドル以上、家族で450ドル以上は、確実にかかるのだということです。 高額な医療保険のため低所得者で、無保険の人が病気になった場合どうするかということは今、アメリカでは大変な問題になっているそうです。

(米国の鍼灸、カイロプラクティクを見学して)
アメリカでの、鍼灸の認知度ですが、われわれが訪れたミッドウエストでは、まだまだ鍼灸を実際体験したことのある方は少ないようでした。 やはり、東洋人が多く分布する西海岸側、また東海岸側であればニューヨーク等の都会では、認知度も高くクリニックもたくさんあるそうです。 また、当たり前かもしれませんが、クリニックとしての経営上の問題、または治療上の悩み、患者の多くの症状などは、日本のそれと全く同じであると感じました。 治療の際に使う、器具、備品についてはさほど日本のそれと変わらないでしたが、患者さんに対して説明をするための(先生のプロフィール、病状の説明、治療の方法、治癒後の生活上の注意など)ビデオや、ちらし、ポスターなど工夫されたものが、どこの院にもたくさんありました。 また、カイロプラクティクのクリニックで、初めに驚いたことは、アシスタントとして働いているスタッフたちと、先生、患者さんとが大変にフレンドリーに会話していることです。
ベテランカイロプラクターのヘンドリックソン氏

患者さんたちは、まるで仲間のところへ遊びに来るようにやってきます。先生は、調子が良くなってきた患者さんとはハグ(抱き合って)して、いっしょに喜びます。 しかし、患者さんたちはよくみていると、喜びだけでなく不安、不満も本当にストレートに伝えます。 コミュニケーションをしっかりとり、しかしいうべきことははっきり伝える、それも短時間に。このあたりは、アメリカ的な感じがしました。 それから電子カルテや、コンピューターによる患者データーの整理、測定などコンピューターソフトが大変よくできていて、それらを大変効果的に使いこなしている点は、うらやましかったです。

最後に

GSEプログラムは、ほんとうにユニークで、素晴らしいプログラムでした。 帰国後、日本を、自分の職業を、自分自身を見つめ直す良い機会となりました。

また、この旅行は参加する人の求める心次第で、いろいろなことを得ることができると思います。 今回このような機会に恵まれたことは私自身本当にラッキーでした。 そして、こんなに素敵な経験をさせていただけたことをウイスコンシン州のホストファミリーすべてに、2660地区、6270地区のGSE委員会の皆様、またご協力くださったすべてのロータリアンの方々、佐藤団長はじめ、団員の土佐さん、玉井さん、太田さん、また快く送り出してくれた職場のスタッフ、家族の皆たちに感謝の気持ちとお礼をもうしあげます。